■なぜ「茗荷(みょうが)を食べると物忘れする」のか?

今日、6月13日は「いいみょうが(茗荷)の日」だそうです。

昔から、「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」と言われますが、なぜでしょうか? この言い伝え、実は、仏教に関係があるのです。そのいわれについて、東寺のお坊さんの法話集第1巻『人間は何度でも立ち上がる』の中で、東寺・山田忍良師がお話しされているので、ご紹介します。


■塵(ちり)を払(はら)わん、垢(あか)を除(のぞ)かん」 ~周梨槃特(しゅりはんとく)の教え~ (2010年10月22日の法話より)


周梨槃特(しゅりはんとく)には双子の兄がおりました。二人はそろってお釈迦様のお弟子になりました。お兄さんはもの覚えがよく、難しいお経もすらすらと暗記してしまうほどでした。それに比べて弟の周梨槃特はもの忘れがひどく、お経はもちろんのこと自分の名前さえも忘れてしまうほどで、いつも名札を首からぶら下げていました。

 

お兄さんは周梨槃特に言いました。「これではこのまま修行を続けても、とても悟りには至らないだろうから、田舎のお家に帰りなさい」と。

周梨槃特がさびしくたたずんでいると、お釈迦さまがお通りになりました。周梨槃特はなんとかお釈迦さまのそばを離れず修行を続けたいとお願いしました。

するとお釈迦さまは一本のほうきを持ってこられました。そして「このほうきを使って、『塵(ちり)を払わん、垢(あか)を除かん』と唱えながら毎日お掃除を続けるのですよ」とおっしゃいました。

周梨槃特は来る日も来る日も「塵を払わん、垢を除かん」と唱えながら、一生懸命お掃除を続けました。

愚か者と呼ばれていた周梨槃特ですが、この長年の掃除修行により、お掃除では誰にも負けないほど上手になりました。お釈迦さまはその尊い姿を見てこうおっしゃいました。「周梨槃特が一心不乱にお掃除する姿は、どんなお説教よりも人々に仏の教えを施しています。みんな周梨槃特を見習いなさい」と。

 

そして、とうとうお釈迦さまに代わってお説教に出かけていくようにまでなりました。

周梨槃特のお話は誰にもわかりやすいお話でした。それもそのはず、「塵を払わん、垢を除かん」というだけでした。しかし周梨槃特の姿からは後光が差し、誰もが心の底から仏の教えを有り難くいただいたということです。

そうです、周梨槃特は「人間にとって最も大切なことは、毎日のお掃除のごとく、自分の心の中の塵と垢を除き、自己を磨くことである。それは一日も休むことなく、生涯続けなければならない修行である」という深いお悟りを得たのです。

 

その周梨槃特が亡くなったあと、そのお墓には誰も見たことがないお花が咲いたそうです。それは、一生涯名(な)を荷(にな)って苦労した周梨槃特にちなんで「茗荷(みょうが)」と名付けられました。「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」というのは、このお話から始まったとされています。


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