■EVのワイヤレス充電とは?

最近メディアで「EVのワイヤレス充電」が話題になっています。スローウォーター刊『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来』(江田健二)では、第1章「蓄電池×モビリティ」で、当テーマについて詳しく解説しています。その一部をご紹介しましょう。


■ワイヤレス充電化が進むEV

序章で、ワイヤレス充電のお話しをしました。今、EVに家や充電スポットで充電するときには専用のプラグ(ケーブル)を接続する必要がありますが、このプラグの着脱には結構手間がかかります。しかし、ケーブルを使わないで駐車場などに止めておくだけで無線充電できれば非常に便利です。

今、そうしたニーズに応えるべく、トヨタや三菱をはじめ、世界の自動車メーカー各社は競ってEVのワイヤレス充電化の実証実験を行っています。そのシステムは割とシンプルで、車の下側に電気を受電する装置(パット)を搭載し、駐車場に設置した送電パットの上に車を止めれば、そのまま充電ができるというものです。

このシステムの実用化が進めば、スーパーやショッピングモールに車で買い物に行って送電パット付きの駐車場に車を止めておけば、買い物中に充電ができてしまいます。また、路線バスもバス乗り場や停留所で停車中に充電できますし、タクシーも駅のロータリーなどで客待ち時間に効率よく充電できるようになります。

 

さらに、停車している間だけでなく、走行中にもワイヤレス充電できる技術が研究開発されています。NEXCO中日本は道路にワイヤレス充電装置を設置しての走行中の電気自動車に無線で電力を伝送する「走行中給電システム」の屋外走行実験に成功したそうです。

こうした技術はまだまだ始まったばかりですが、走行中のワイヤレス充電が可能になれば、搭載するバッテリーの容量も小さくなり、車体の軽量化やパッケージングの高効率化、デザインの変化など、EVの姿を一気に変えてしまうはずです。ワイヤレス充電については、モバイル端末(スマートデバイス)とも密接な関係があるので、後ほどまたお話しします。

■どんな電池が使われているのか

車載用としての蓄電池は、エネルギー密度(単位容積当たりに取り出せるエネルギー)が重要になります。特にEVは電気のみを動力として走行するので、電池容量の大きいことが重要な要素になります。単純に電池を大きくすれば一定の容量は確保できますが、自動車に搭載できる電池のスペースは限られます。そこで、EVには小さなサイズで大きな容量であることが求められるのです。

ではEVやPHVには、実際にどんな蓄電池が使われているのでしょうか?

かつては車載用の蓄電池といえば鉛蓄電池が主流でしたが、重たい、電気容量が小さい、臭いがきついといった理由もあって普及せず、現在、ほとんどのEVやPHVにはリチウムイオン電池が使われています。リチウムイオン電池は改良によって様々なタイプのものが開発されてきており、今後も車載用電池の主流製品であり続けるといわれています。

ただし、リチウムイオン電池以外の蓄電池が自動車にまったく使われていないわけではありません。例えば鉛蓄電池は一部のEVやPHVの補機用バッテリーとして使用されています。鉛蓄電池は容量はあまり大きくありませんが、寿命が長く価格が安いというメリットがあるからです。

ちなみにトヨタのプリウスには、リチウムイオン電池タイプとニッケル水素電池タイプがあり、燃費を重視するタイプや高位グレードの車両はリチウムイオン電池を使っています。リチウムイオン電池は高価ですが、軽く小さく、出力も高いという特長があるからです。一方、ニッケル水素電池は重く大きいですが、安価で低温に強いという特長があります。そのため、寒冷地仕様の車や低位グレードの車にはニッケル水素電池を使用しているのです。

多くのEVメーカーで使用しているリチウムイオン電池の仕様や性能はメーカーや車種・車両によって様々です。EVは搭載しているバッテリーの性能が車自体の性能に直結します。したがって、各自動車メーカーは、日々バッテリーの技術開発にしのぎを削っているというわけです。

今後EVの数が増えていけば、リチウムイオン電池の性能はますます向上していくでしょう。それに伴い、リチウムイオン電池の二次利用として住宅用や太陽光発電用など定置用蓄電池としての転用が増えていくはずです。

■どこで、どのように充電できるのか

EVやPHVの普及拡大の鍵を握るのは、価格や性能などのほかに、「充電方法」の利便性向上にあります。

EVの充電設備(充電スポット)は、ここ数年で全国的に急増しています。主な設置場所は、コンビニ、スーパーマーケットやショッピングモールなど商業施設、宿泊施設、カーディーラー、飛行場や市役所の駐車場などです。また、道の駅や高速道路のSA、PAなど長距離移動時の幹線道路沿いにも充電設備が増えています。最近の調査によると、全国の充電スポット数は1万8000箇所以上あり(2019年末時点)、この数字は、今やガソリンスタンド数の約6割に匹敵するともいわれています。

EVの充電設備は、30分程度の短時間で充電できる「急速充電設備」と、一般家庭でも設置できる「普通充電設備」の2種類に大別されます。日常よく利用するコンビニや高速道路のSAやPAには、短時間で充電できる急速充電器が、また宿泊施設など長時間駐車する施設では、普通充電器が設置されています。

急速充電器は電気容量が大きいため、電気設備の容量確保が必要となり、導入には比較的大きな改修が必要となります。

充電時間の目安は、EVの場合なら急速充電設備で30分~60分で80%程度まで充電可能。普通充電器だと4~8時間程度です。ただし車両に搭載されている電池容量により、充電時間は大きく異なります。

最近は、充電サービス利用時の料金支払いに使える便利な「充電カード」や、外出先で車の電気を使える「給電器」など、EVならではの便利なツールも増えているようです。


●『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来』(江田健二)では、下記のようなコンテンツで「蓄電池×モビリティ」分野の将来について解説しています!


自動車産業からスマートモビリティ産業へ

蓄電池ビジネス発展の鍵はEVにあり

EV、HV、PHV(PHEV)は何が違うのか

EV関連のビジネスチャンスはどこにあるのか

ワイヤレス充電化が進むEV

どんな電池が使われているのか

どこで、どのように充電できるのか

「V2Hシステム」としてのEV活用

V2H機器の詳細と利用のメリット

マンションにおけるEV充電設備

EV業界の世界的トレンド

テスラから中国メーカーまで EV・PHV市場の最新動向

EV市場の今後と将来予測

主要自動車メーカーの電動化計画


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